牛には“生みの親”と“育ての親”がいるって知ってる?

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私たちが普段口にしている牛肉は、どこで生まれてどんなふうに飼育されているのでしょうか。

国内で生産される食肉用の牛のほとんどは「繁殖農家」と「肥育農家」という、2つの農家で育てられています。

それぞれはどんな役割を担っているのでしょうか。

肉牛の生産から販売までの流れ


まずは牛が生まれてから食肉として販売されるまでの一連の流れを見てみましょう。

牛は母牛への種付けにより生まれます。生まれたばかりの仔牛の体重は約30kg。

たくさんの飼料により、種付けから約3年で約700~1000kgに育ちます。育った牛は食肉市場に出荷、屠畜(と畜)を経て牛肉となり、スーパーマーケットなどの販売店や飲食店に届けられます。

繁殖農家と肥育農家とは

鹿児島の高崎畜産 このような全体の流れのなかで、母牛から仔牛を増やす「繁殖」と、仔牛を出荷するまで大きく育てる「肥育」する過程があります。それぞれ“生みの親”を繁殖農家、“育ての親”を肥育農家といいます。それぞれの過程には育成に必要なノウハウが異なるため、分業化されているのです。

ちなみに、ブランド牛にはブランド牛と名乗るための定義が存在します。例えば、仙台牛。定義の一つに「仙台牛生産登録農家が個体に合った適正管理を行い、宮城県内で肥育された肉牛であること。」と仙台牛銘柄推進協議会が定めています。

つまり、県内の肥育農家で肥育されていれば仙台牛として販売でき、宮城県外の繁殖農家で生まれた牛でもよい、ということで「宮城県内で生まれ育った牛」ではないのです。

以下、繁殖農家と肥育農家の違いについて、もう少し詳しくみていきましょう。

繁殖農家とは?繁殖に大切なこととは?

鹿児島県の繁殖農家 上別府美由紀さん繁殖農家は、和牛の母牛に、和牛の雄牛の精液を人工授精させるか、受精卵を母牛の卵巣に着床させる受精卵移植によって仔牛を産ませることができます。

種付けから分娩までの期間は、ヒトの赤ちゃんと同じで約10ヶ月。その後、生まれたばかりの仔牛がすぐに肥育農家のもとに渡るのではなく、8〜10ヶ月の間、育成牛舎と呼ばれる仔牛専用の牛舎で飼養されていきます。

育成牛舎での管理が終わり約30kgから300kgまで育った牛は「素牛(もとうし)」と呼ばれ、仔牛市場にて肥育農家に競り落とされます。
全国に千以上いる種雄牛

繁殖農家にとって大切なことの1つに「血統の選択」があります。和牛の肉質は競馬のサラブレッドのように血統でほぼ決まると言われており、一頭一頭に個体識別番号が付けられ、出生から食肉として販売されるまで管理されます。どんな母牛を選び、どんな種雄牛と交配させるかが、重要な鍵を握るのです。

母牛の発情期を逃さずに受精させ、効率よく仔牛を出産させることもまた大切なことです。母牛は前の子を出産してから1ヶ月ほどで次の妊娠が可能で、おおよそ10〜12才の間に7〜10頭を産み、その後は経産牛として美味しいお肉として私たちに届けられます。経産牛は年齢を重ねただけ、赤身が多く味わい深いと言われています。
峯野牧場のお母さん牛

免疫力の弱い仔牛をいかに病気にかからないように飼育できるかも大切です。生まれたばかりの仔牛の病原体に対して無防備な状態ですので、母牛の初乳を与えることで仔牛に十分な免疫を与えたうえで、出荷まで大切に管理されています。

肥育農家とは?肥育に大切なことは?

千葉の肥育農家 髙梨裕市さん 「肥育」とは、文字通り「飼育して肉や脂肪を増やすこと」をいいます。

肥育農家の仕事は、仔牛市場で素牛を競り落とすところから始まります。血統や体長、骨格、無駄な脂肪がついていないかなど、さまざまな基準で見比べながら、理想的な牛を選んでいきます。

市場で買い取られた素牛を、肥育農家が牧場で飼育。一般的には、穀物や牧草、稲わらなどの飼料用作物を与え、20ヶ月ほど肥育された牛が、食肉市場に出荷・と畜された後、枝肉となって市場で取引されます。
髙梨さんこだわりの飼料

肥育農家の大切にしていることは大きく2つあり、1つ目は前述した素牛の選び方。そして2つ目は、肥育技術です。限られた期間で効率よく成長させる必要があります。

先ほど「和牛の肉質は血統で決まる」と述べましたが、血統のポテンシャルを最大限に引き出すのが肥育農家の役目です。肥育期間を「前期」「中期」「後期」の3つに分け、飼料の配合や与える量をコントロールしながら理想的な肉質を目指していきます。

注目される一貫経営とは

一貫経営の平松畜産 これまで和牛の生産では、繁殖経営と肥育経営の分業化が主流でしたが、昨今注目されているのが、繁殖と肥育をを一農場で行う「一貫経営」です。

一貫経営が注目される背景として、自ら血統レベルで試行錯誤ができるので、より個性のあるお肉を生産することが可能になります。

しかし繁殖と肥育は専門性が異なり、より広い土地や設備投資が必要になります。

牛肉は3年間大切に育てられた愛の結晶


日頃私たちが口にしている牛肉は、生まれてから枝肉になるまで約3年間にわたり、繁殖農家や肥育農家によって大切に育まれてきたものなのです。

生産者の物語を知ることでお肉の美味しさが何倍にも感じられるはず。

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