「肉の美味しさの定義~肉の「おいしさ」とは何か?~」

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「肉の美味しさの定義~肉の「おいしさ」とは何か?~」

肉の旨味:科学と感覚の融合

私たちが肉の美味しさを感じる瞬間、それは単なる味覚だけではありません。 科学と感覚が織りなす複雑なハーモニーが、私たちに至福のひとときをもたらしてくれます。 肉の旨味は、化学的な反応と心理的な要因が絡み合い、私たちの舌と心を満たすのです。 本コラムでは、肉の美味しさの背後にある科学的メカニズムと、私たちが感じる「おいしさ」の心理的側面について探っていきます。

「おいしさ」とは?

食べ物のおいしさは、多くの要素によって構成されています。 味の基本は5原味といい、次の5つです。
①甘味
②酸味
③塩味
④苦味
⑤うま味
この他に、辛味、渋味などがあります。

おいしさの秘密は?

食べ物を口に入れると、舌の味蕾が味をキャッチし、鼻による臭覚で香りを、口の粘膜による感触でテクスチャー(硬度や粘度)や温度を、 目による視覚で形や色つやを、そして、耳による聴覚で音(咀嚼音)を感じ取り、それらを総合したものが「食味」です。 他にも、食事の雰囲気や体調、食習慣などが混じり合い、好ましく合致するときに「おいしい」と感じ満足感を得ることができるのです。

食肉のおいしさ

1.うま味とこく

食肉の味はうま味とこくによって醸し出されます。 うま味のの主な成分は「グルタミン酸」や「イノシン酸」です。 こくについてはまだ分かっていない部分が多いですが、5原味の内の複数のものが味覚神経を刺激して感じられると言われています。 こくには脂肪も関わっており、融点によりこくの感じ方も変わります

また、うま味成分は単独で使うよりも、昆布だし中に含まれるアミノ酸系うま味成分のグルタミン酸と、核酸系うま味成分で鰹節に含まれるイノシン酸などと組み合わせることで、うま味が飛躍的に強くなることが知られています。 これが、「うま味の相乗効果」と言われています。 チクタグで掲載している「こぶ黒」「土佐あかうし」には、グルタミン酸が豊富に含まれているので「うま味」をより感じることができるかもしれません。

2.香り

味に関する部分では、食肉(牛・豚・鶏肉)は構成成分が基本的に同じなので、実は鼻をつまんで食べると食肉の種類の区別はつきません。 そのため、食肉の種類を特徴付けているのは香りなんです。 食肉の香りは煮たり焼いたりしたときにはっきり出ますが、その香りを嗅いだだけで区別がつけられる動物種特有の香り(動物臭)があります。 この香りは肥育される時の飼料や、屠畜後の熟成の程度によっても変化します。 その中でも、和牛独特の香りは「和牛香」といわれています。

3.加熱によるおいしさ

食肉のおいしさの構成要素である味(うま味、こく、脂肪の滑らかさ)、香り(生肉の香り、加熱後の香り)、色、テクスチャー(かたさ、もろさ、噛み応え)、保水性(ジューシーさ、うま味)は加熱によって変わります。 加熱によるかたさや噛み応えは、食肉のタンパク質変性によって起こります。食肉が最も柔らかくなるのは内部温度が45~50℃ほどで、70℃前後になると硬化します。 その後長時間加熱し続けると再び軟化します。また、食塩を添加すると食肉の保水性が向上し、加熱した時に柔らかくなる事が知られています。

肉の美味しさは、単なる味覚の問題ではなく、うま味とこく、香り、そして加熱による絶妙な変化が織りなす総合的な体験です。 これらの要素が一体となり、私たちに至福のひとときをもたらします。 次回の食事の際には、ぜひこれらの要素に思いを馳せながら、肉の美味しさを存分に味わってみてください。 美味しい肉料理が、皆様の食卓に笑顔と幸せを運んでくれることを願っています。