A5ランクが美味しさのすべてじゃない?牛肉の格付けを知ろう

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美味しい牛肉を選ぶとき、あなたはどんなところをポイントにしていますか?肉の「ランク」を参考にしている人も少なくないのではないでしょうか。

パッケージに「A5ランク」というシールが貼られていると、それだけで「美味しくて特別なお肉」と思うかもしれません。しかし、実はA5ランクが必ずしも「美味しさの証明」ではないのです。

どんな牛肉がA5ランクになるのか。「A」って何?「5」って何?他にどんなランクがあるの?意外と知られていない牛肉の格付について解説します。

牛肉の格付けとは?誰がなんのために決めるの?

日本の牛肉の格付(ランク付け)は、公益社団法人日本食肉格付協会(JMGA)という団体が行っています。

前身となる社団法人日本食肉協議会が、今から約60年前の1963年12月に牛枝肉の格付を開始し、現在では全国126の食肉卸売市場や食肉センターなどで専門の格付員によって格付が実施されています。

JMGAが格付を行う目的は、全国統一の規格により中立の立場で枝肉の品質を評価することで、市場価格を公正に保ち、畜産農家や消費者に適切な利益をもたらすことです。

例えば同じ畜産農家が同じ環境で育てた牛でも、個体によって肉質は異なります。松坂牛や神戸牛のような高級銘柄であっても全てが最高ランクとは限らず、枝肉によって格付は変わるのです。

ちなみにJMGAは牛だけでなく豚の格付も行っており、豚の場合は「極上・上・中・並・等外」と、牛とは異なる指標で等級がつけられています。

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格付けの対象になる枝肉とは?部分肉・精肉との違い

先ほどから「枝肉」という言葉が出ていますが、枝肉とは、牛や豚の生体をと畜した後で内臓を取り除き、頭から尾にかけて縦に2分割した骨付き肉を指します。

格付は、この枝肉の状態で行われます。格付されてセリに出された枝肉は、ロースやヒレ、ネック、サーロインなど13の「部分肉」に分割され、さらに「精肉」として細かくパッケージされたものが店頭に並び、消費者の手に渡るのです。

牛肉の格付け等級の種類


牛の枝肉は大きく2つの異なる視点で評価され、A・B・Cのアルファベットの等級と、5から1までの数字の等級を掛け合わせた15段階で格付けされます。

A〜C:アルファベットは「歩留等級」

AからCまでのアルファベットは枝肉の「歩留」を表す等級です。歩留とは、製造業では「原料に対する完成品の割合」を示す言葉。要は、生産効率を示す指標です。

牛肉の格付では、ロースしんの面積や、バラ・皮下脂肪の厚さを測定することで、枝肉の重量に対する部分肉の重量を予測します。その結果として歩留基準値が72以上の場合「A」、69以上72未満の場合「B」、69未満の場合「C」とランクがつけられます。

歩留基準値が高い枝肉は、原材料のロスを抑えて効率的に生産できていることを意味し「収益性が高い良い肉である」という判断になるのです。

5〜1:数字は「肉質等級」

5から1までの数字は、枝肉の「肉質」を表す等級です。肉質は「脂肪交雑(いわゆる霜降りの量)」「肉の色沢」「肉の締まりときめ」「脂肪の色沢と質」の4項目で評価されます。

格付員が枝肉を目で確認し、4項目それぞれを5段階評価で判定します。

判定の結果、4項目のなかでもっとも低い等級で格付けが決定します。例えば、「肉の色沢」「肉の締まりときめ」「脂肪の色沢と質」の等級が5でも、「脂肪交雑」の等級が3の場合、枝肉の肉質等級は3となります。

格付け等級と味の評価は別物?A5ランクは今や特別ではない

格付員が決定した等級に応じ、枝肉に等級印が押され、それによって取引の価格が大きく変わります。

ちなみに、シコリや傷、シミといった瑕疵(かし)がある場合、等級印に加えて瑕疵の種類を示すア〜カのカタカナで瑕疵印が押され、取引価格が下がる場合もあります。

ここまでのおさらいも踏まえて、A5ランクの牛肉がどんなものであるかをまとめると以下の通りです。

A5ランクの牛肉とは…

  • ・枝肉の重量に対する部分肉の重量が基準値を上回っている
  • ・肉に含まれる霜降りがかなり多い
  • ・肉の色や光沢がかなり良い
  • ・肉の締まりがかなり良く、きめがかなり細かい
  • ・脂肪の色や光沢、質がかなり良い

格付はやはり、質の高いお肉である証といえるかもしれません。ただし、ここで一つ重要なのが「ランク付けの過程で味の評価はひとつも含まれない」ということです。

味わいを追求して与えるエサや飼育方法を工夫している生産農家があっても、そのこだわりが必ずしも等級に反映されるわけではありません。

また、肉質等級の判定では、枝肉に含まれる霜降りが多いほど高い評価がつきますが、最近では健康思考の高まりで脂身の少ない肉を選ぶ人も増えてきているため、A4やA3の牛肉の方が好みだと感じる人もいるでしょう。

その一方で、JMGAが発表している牛枝肉の格付結果によると、1996年1月〜12月にA5ランクと判定された牛枝肉が全体の6.8%だったのに対し、2023年1〜12月は29%となり、市場に出回っている牛肉の1/3がA5ランクであることがわかります。

格付け等級にとらわれず「本当に美味しいお肉」に出会う方法


プロの目による格付は、牛肉の品質を保証するうえでとても重要な指標です。

しかし、味の評価は全く別もの。A5ランクは市場で高値がつく一方、味の好みは多様化し、その“A5ランク神話”は崩れつつあり、いまはA5にこだわらない独自の味を追求する生産者が多くいます。

チクタグは、畜産に情熱を注ぐ選りすぐりの生産農家さんとつながり、その想いやこだわりを伝えながら、手塩にかけて育てたお肉をさまざまなかたちでみなさまにお届けしています。ご自宅用としても贈りものとしてもおすすめです。

生産農家さんの「物語まで味わう贅沢」を、ぜひ感じてみてください。

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